<分析読書>

分析読書 一般書から専門書まで効率的な読書方法

横山淳

◎はじめに

最近、読書していますか?読書はしたほうがよいが、『めんどくささ』とセットになっており、なかなかきっかけがないとページはめくれないかと思います。

今回『分析読書』という方法を通して本の読み解きかたをコラムにさせていただければと思います。なぜ本を読むべきか?と問われたらあなたは何と答えますか?私は最終的に『本を書くスキル』を手に入れるためと答えます。一冊の本を読み解き内容を深く理解、そしてまた別の本を手に取る。この継続こそが本を書くための近道になります。

また、今後リハ職として活動を続けるなら、確実に一般大衆の前に出て問題解決をすることになる機会は多くなると思います。それは、地域での講演会、多職種との話し合い、リハ知識が載った一般書の執筆、、、様々な形があるかと思いますが、一つ言えることは誰かに何かを理解して欲しいなら深い理解は必須であり、『本を書くスキル』はそのために十二分に役立ってくれるということです。

今回紹介したい『分析読書』は一冊の本を、浅く情報収集・内容把握を目的に読む方法から、深く内容を理解しアウトプットしていく方法までの内容となっています。『分析読書』の原典はJ・モーティマー・アドラー著『本を読む本』という本です。アメリカでは大学進学を控えた高校生にオススメされる本で、入学後から卒論を書くまでの期間の自己学習を効率的にするためのハウツー本という位置づけになります。

 

◎分析読書

分析読書は以下の3段階に分けられます。段階が上がれば深い読書になります。

①分析読書 第一段階『概略』

②分析読書 第二段階『解釈』

③分析読書 第三段階『批判』

 

①分析読書 第一段階『概略』

以下の質問に答えられるように、本の本文をあまり読まずに情報収集をしていきます。

1.分類の重要性:どんな種類の本なのか?教養書・専門書・小説・詩・論文等。

2.まとめの重要性:要約を作る。著者の意図・主題・目的はなにか?

3.構成の重要性:主題と構成する要素を理解。秩序をもって配列されているか?

4.問題の重要性:著者が問題としていることは何か?その解決策は?

 それでは具体的な方法の説明を以下に記していきます。

 

〇タイトル・著者・はじめに・おわりにの確認

タイトルはその本の内容を一口で言った結果や内容の伏線回収となることが多いです。これは書く側の都合でもありますが、執筆依頼を受けたら仮タイトルと方向性を決め執筆開始。その後、途中か脱稿後にタイトルを再考することが多いようです。執筆中に相応しいタイトルが考え出されることも多いようです。著者にとっては大切な我が子にも等しい本ですから、タイトルには著者の思いの強さが反映されやすいです。

著者名や肩書からどのような系統の本なのかも類推することができます。

はじめにでは、著者の執筆までの経緯や内容のさわりが書かれていることが多いです。

おわりにでは著者の本に対する思いが書かれていることが多く、著者として特に重要に思っている点の情報がわかります。

 

〇目次を調べる

本の構成を知ることにより、内容の把握や類推が可能になります。どこにどんな内容が書かれているのかを確認していくことで、重要そうな章の選定も可能です。

 

〇索引を調べる・その本の出版年数を調べる

論文・専門書には前提になっている考え方があります。その本がどういった前提条件がもとになっているかという点は重要です。また時代とともに主流な考え方や新説により前提条件自体が違ってくる可能性もあるので出版年数も重要情報となります。

 

〇帯を調べる

ことの他、本の帯には手間がかかっているようです。本の内容を、興味を引くレベルで核心に近づきすぎることなく書かれていることが多いです。また、誰かの紹介などは著者の関係者か、著者の分野に詳しい有名人が書いていることもあり、その情報も把握しておくと類推する時に役立ちます。

 

〇要の章を確認する

これまでの情報をもとに、その本の要となっているであろう章を絞り、その章をさらに細かい構成で内容把握をしていきます。ここに至るまでに、ほぼ全ての質問に答えられてきたことと思います。あとわからない部分は問題点に対する解決方法だけかと思います。要点を見極め、ここではじめて本文の23ページを読みます。特に「つまり」や「したがって」という言葉の後には結論が書かれていることが多いので、その前後を読み、著者なりの問題に対する解決策を理解していきましょう。

また、ここまでの方法で質問に対しての答えを「自分の言葉」で明確に文章化しましょう。時間としては慣れれば15分ほどで可能となります。

 

②分析読書 第二段階『解釈』

ここからは少し深い読み方になります。『概略』の段階で得た情報をもとに一度本を通読しましょう。ある程度、本の中身を把握していることになるので、通読するとしてもそれ程時間はかからないかと思います。その後に以下の質問に答えていってください。

1.単語の重要性:重要語の単語の意味を著者と明確に統一します。一つの単語で複数の意味を持つ場合、一つの概念を複数の別の単語で説明する場合もあります。ニュアンス違いや使用場面も考慮し意味を明確にしましょう。

2.命題の重要性:命題とはあることに対する著者の判断です。本を読み解き著者が言わんとする命題を自分の言葉で言い換えることで深い理解となります。

3.論証の重要性:論証とはある結論を導くための根拠です。問題解決までのプロセスが論理的で根拠が示されながら展開、結論に至ることができている本が良い本です。この流れを自分の言葉で説明できるようになりましょう。

4.解決の重要性:導き出された論証をもとに考察された問題に対しての具体的な解決策が提示されていることが重要です。内容に矛盾がなく、具体的であり実行可能、再現性があることが望ましいです。

ここまで読み解く事ができたのならばかなり深く内容を把握していることになります。

 

③分析読書 第三段階『批判』

ここからは著者を超えていく段階になります。読者には著者の言い分に対して賛成・反対の選択をする権利があります。ただし、それは本の内容をすべて理解した人にのみ許される行為となります。その上で、判断を下すには理由が必要です。その理由の考え方が以下です。

1.理解の重要性:著者の考え全てを理解できている。本についての質問はすべて返答できることが必要です。

2.論争の重要性:読書の成功は「知識を得る」事です。絶対に好き嫌いの判断はしない事、感情で決めないこと、必ず内容を見ることが必要です。

3.反論の重要性:著者は根拠を示し結論を出しました。反論するならば客観的で論理的な根拠を伴う反論をしなければなりません。それができないなら反論もしてはいけない。

 

以上をもって本に対しての結論を自分なりに出すことになります。これにて『分析読書』は完了となります。より良い読書のための一助となれればと思います。

 

 

2020年8月24日

 

訪問看護ステーションまごの手 理学療法士 横山 淳

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